2016年11月中国の行政組織「外国人来華工作許可工作小グループ」から発表された政策が中国に住んでいる日本人を含む外国人を震撼させました。
中国語全文はこちら 外国人労働許可制度 通知全文
※中国人の総務・人事スタッフへ情報として流してあげてください。
簡単に言うと、
中国にいる全ての外国人をABCランク分け実施します!
この基準によって就業ビザの発行に制限をします!
ということです。
文章だけでもショッキングな感じがしますが、この施策が行われると実際どんなことが起こるのでしょうか?当事者である在中日本人の方は大きな衝撃を受けているのようですね。特に人事を行っている人は、この施策について十分理解し、対策をとる必要があるでしょう。
ここからは、具体的に外国人労働許可制度のABCランク付けについて説明します。どこよりも分かりやすい、中国の外国人労働許可の新制度徹底ガイドです。
中国の外国人労働許可新制度の概要
中国で働く外国人を対象に今まで発行していたのが、
「外国人入境就業許可」と「外国専家来華工作許可」でしたが、今後は
「外国人来華工作許可」に統一となります。
具体的には「外国人工作許可通知」と「外国人工作許可証」を新たに発行します。
その発行にあたり、独自の基準(基準は下記に詳細書いています)によってABCランク分けを行います。
そのランクによっては「外国人来華工作許可」の発行数量に制限を設けます。
「外国人工作許可通知」「外国人工作許可証」は就業ビザを取得する際に必ず必要となりますので、この制度によって、就業ビザが出ない人や、出にくい企業が出てくることは十分考えられます。
中国の外国人労働許可制度の開始時期
実施にあたり、試用期間と試用地域を設けています。
試用期間は2016年10月~2017年3月迄です。
試用地域は北京、天津、河北省、上海市、安徽省、山東省、広東省、四川省、雲南省、寧夏自治区です。
全国での正式な実施は2017年4月1日からです。
既に試用築によって実施されていますので、対象外の地域の人は、その情報を入手して、対応策等を検討してください。
中国の外国人労働許可制度 発給制限等
Aランク:無制限
Bランク:発給制限あり・満60歳を超える者は申請できない
Cランク:発給制限あり
このランク別の発給制限があるということは、その先の就業ビザ申請ができないということですので、どの程度の制限になるか、今後の動向に注意が必要です。
ABCのランク付け
それぞれランクによって中国の扱いが変わってくるのでしょう。就業ビザや在留資格などの許可など様々な場面で影響がでてきそうです。
Aランク
Aランクの外国人は、居住地域に明るい未来をもたらす優秀な人材のことで、居住を奨励する。
呼称は「外国高級人材」とする。
(2)主な該当者は以下である。
①ノーベル賞受賞者
②アメリカ国家科学賞など各国の権威ある賞の受賞者
③「世界500強企業2015」の本部高級管理職や技術開発研究員など
※日本勢では、トヨタ、日本郵政、ホンダ、JX、NTT、日産、日立、ソニー、パナソニック、三菱商事、丸紅、日本生命、ソフトバンク、東京電力、東芝、イオン、第一生命、三井物産、セブン&アイ、伊藤忠
④ゴールドマンサックスなどの世界的金融機関、デロイトなどの世界的監査法人の高級管理職
⑤別に定める「ランク付け採点表」で85点以上の人材
Bランク
Bランクの外国人は、国内市場の需給や発展に応じて増減させていく人材のことで、居住を制御する。
(1)呼称を「外国専門人材」とする。
(2)主な該当者は以下である。
①別に定める「ランク付け採点表」で60点以上の人材
②学士以上の学位と2年以上の関連する仕事の業務経験がある者で下記に該当する者
・グローバル企業が派遣する中級階層以上の社員、外国企業の駐在事務所の代表者
・各企業が招聘する外国管理者或いは専門技術社員
Cランク
Cランクの外国人は、臨時的、季節的、及び技術を伴わないサービス業などに従事する外国人で、今後は国家政策に基づきながら、居住を厳格に制限していく
(1)呼称を「外国普通人材」とする。
(2)主な該当者は以下である。
①別に定める「ランク付け採点表」で60点に満たないの人材
②季節労働の外国人
③部門管理を割り当てられる外国人
中国政府の外国人管理の利便性を高めるために作られた新制度ですが、現地の外国人からの反発も大きそうです。
既に試用が進んでいる新制度ですので、自分が何ランクに当てはまるのかをまず確認しておきましょう。
特に現在在中日本人の方や、仕事で中国へ赴任する可能性のある方、人事部の方などは、実際に条件と点数が分かるようになっておいた方が良いでしょう。ポイントはBランクとCランクの境界線にいる人でしょうか。
下記が、中国政府からの発表によるABCのランク付けの詳細です。以下の7項目の合計得点がその人のランクになります。
1.年齢/中国の外国人労働許可制度
18歳~25歳 → 10点
26歳~45歳 → 15点
46歳~55歳 → 10点
56歳~59歳 → 5点
60歳以上 →0点
前から就労ビザが60歳以上だと出にくいなどと言われている通り、年齢が上がると点数が低いですね。ちょっと意外だったのが18歳~25歳も10点と25歳以上よりも低めに設定してある点。若い職にあぶれた人が中国にやってくることも懸念しているんでしょう。
2.学歴/中国の外国人労働許可制度
博士号 → 20点
修士号 → 15点
学士 → 10点
高卒以下 → 0点
学歴を重視する傾向の中国の方針が強く感じます。一般の駐在員は学士レベルの人が多いと思いますので、理系や技術系の人材を強化していきたいという意向でしょうか。
3.中国語/中国の外国人労働許可制度
5級以上 → 10点
4級 → 8点
3級 → 6点
2級 → 4点
1級 → 2点
それ以外 → 0点
これは漢語水平試験(HSK)の級で評価するんですが、普通の駐在員は中国語がしゃべることができても、漢語水平試験は受験していないことが多いです。日本ではこの漢語水平試験(HSK)の認知度はすごく低いです。今回の新制度によって、受験者が増えたり、注目されていく試験になるでしょう。欧米系の人に比べると日本人は漢字が理解できるのでHSKには有利に働くはずです。
4.年棒/中国の外国人労働許可制度
45万元以上 → 20点
35万~45万元 → 17点
25万~35万元 → 14点
15万~25万元 → 11点
7万~15万元 → 8点
5万~7万元 → 5点
5万元以下 → 0点
これはあくまで中国で収入として申告している分です。つまり多くの駐在員は日本でも給料をもらっていますが、その場合はカウントされません。そうなると、中国の年棒は決して高い金額になることがなく、結構厳しい結果になります。中国での所得が多いとその分納税額も多いので、その分の優遇と考えるべきなのでしょうが、所得証明などの提出などが必要となりそうです。
会社として、中国での支払い給与と日本の給与のバランスを調整して対応するなどの方法も可能ですので、ここはやり方によっては得点調整が可能と思われます。
5.一年の内勤務日数/中国の外国人労働許可制度
9カ月以上 → 15点
6~9か月 → 10点
3~6ヵ月 → 5点
3カ月未満 → 0点
駐在員の場合でも、常に中国にいるわけでなく、他の国との兼務や、日本への毎月の出張をしている人もいます。今までは中国に滞在する期間が183日未満の人は個人所得税の支払いが免除されるという制度があったため、183日を基準に出張を制限している人もいましたが、今後はもうひとつ、ABCランクでの基準も考える必要があるようです。
6.勤務地/中国の外国人労働許可制度
西部地区、東北地区、中部貧困地区 → 10点
その他地区 → 0点
日本人駐在員の大半は、北京、上海、広州、や江蘇省、浙江省、広東省など経済的に発展している地区への赴任となりますので、それらは全て0点とされます。都市部への進出よりも農村部への進出が優遇されるというのは、中国の西部大開発の施策で推進されていますが、実際は沿岸部に富が集中している構図になっています。このABCランクのせいで、意図的に農村部に拠点を作り、そこの在籍にしておくことで10点稼ぐというやり方が横行しそうです。
7.その他 ボーナスポイント/中国の外国人労働許可制度
世界ランキング100位以内の大学卒 → 5点
フォーチュン500強企業の就職経験 → 5点
地方経済の発展に特に必要な人材 → 0~10点
有名大学卒とか、500強企業とか、ブランド好きな中国を象徴しているような制度ですね。これを国の施策として採用しているのが中国の凄いところだと思います。
合計得点とランク/中国の外国人労働許可制度
Aランク → 85~120点
Bランク → 60~84点
Cランク → 59点以下
みなさん如何でしたか?このランク付けで日本人の駐在員のどの程度がCランクになるのでしょうか。個人的には7割以上はCランクになるのではと思います。特にHSKを受験していないことと、日本からの出向者は年配者が多いこと、賃金は日本本社からの支給となっていることが影響してくると思います。
おそらくCランクの人に対しては、今後受給制限がかかってくるものと思われます。就労ビザや、在留許可の取得に影響が出てくるであろう今回の新制度ですが、正しい情報を入手して、対策をとることで、得点も改善することは可能ですので、十分今回の制度を理解してください。
既に試用期間が始まっているので、上海等の試用地域での情報がポイントとなってくるでしょう。
中国の外国人労働許可新制度の目的は何!?
では、なぜ中国はこの外国人労働許可新制度を導入したのでしょうか。
その真意は、現在増え続けている中国で就業している外国人の管理を簡易化し、審査の基準を明確にすることで、外国人の分類を行うためです。
中国は、経済的に豊かになるにつれ、外国人も多く働くようになり、その管理が追いついていかなかった現状を改善する法案のようです。
外国人の就労許可の情報はこちらを参考にしてください 外国人就労許可情報 日本語(JETRO)
日本企業からみた中国の外国人労働許可新制度
このように2017年4月から全ての駐在員にランク付けがされることになります。
今後日本企業で中国への出向者を送る際には、この制度をよく理解して、派遣する人材の点数をあらかじめ把握しておいた方が良いでしょう。
今回は得点の基準をおおよそ明確に提示してあるので、派遣予定の人が何点で、何年後同点数が変わるか、等を予測できるようになるのは良い点だと言えます。
この点数を一つの指標に、点数アップの為HSKを受験したり、給与の調整を行うという対策もとることが可能となります。
就労ビザの情報は別の記事でまとめていますので、こちらを確認ください 2017年 中国就労ビザ情報
実施時期と事実確認
2017年4月から実施されます。既に対外的に発表されている内容ですので、実際に中国に住んでいる外国人からは反発があるようですが、実行されることは間違いないので、どう対応するかを今のうちから検討しておく必要があるでしょう。特に人事担当をしている人は、最新の情報を入手して、対策を練ってください。
まとめ
在中日本人にとっては久々に恐ろしい施策が出されたと感じています。2012年に比べて対中投資が40%減となっている現在、日本にとって、ますます中国離れの要因となる出来事になりそうです。
この施策は中国側の外国人の規制強化の意図が強く感じられる制度で、中国にとって、多くの反感を招きそうな気がします。
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