中国で生活している日本人にとって、Wechatは公私に渡って欠かせないツールとなっていますが、Wechatグループそのものでビジネスを展開している人々がいるという事実をご存知でしょうか?
今回は実例を挙げながら、Wechatグループのユニークな活用方法を紹介致します。
わずか5インチ程度の画面の中に、日本人からすると想像し難いビジネスの世界が広がっているのです。
Wechatグループとは
Wechatグループは、LINEグループと同じようなオンラインでのコミュニティです。
最大で500人の友達をメンバーとしてグループに含めることができます。
一対一の通常チャットと同じような機能を使い、仲のいい友達のグループや家族、職場のグループなど色々なグループを作って、それぞれのメンバーとチャットや写真、モーメンツなどを一度に共有して楽しんでいます。
Wechatグループの新規作成方法は、まず右上にある「十字アイコン」をタップし、「新規チャット」をタップします。その後、招待したい友人をグループへ自動で追加します。招待したいユーザーを決定し、「OK」ボタンをタップすれば、グループが作成されます。グループチャットのアイコンは、チャット一覧に表示されます。
Wechatグループ加入の売買ビジネス
他人と簡単に情報を共有できるWechatグループは、仕事、趣味、同級生、地域ネットワークなど多くの人に利用されています。
10個以上のグループに参加している人も少なくはありません。
そして、オンライン上にあまた存在するWechatグループの売買が、ビジネスとして成立しているのです。
Wechatグループの売手の一人、羅さんからWechatグループを巡るビジネスの実態についてききました。
羅さんは常に十個以上の携帯を持ち、アクティブなWechatグループの情報を一万件以上把握しています。
この大量のグループに、数時間ごとに
「Wechatグループの売買、CM代理、Wechatアカウントの大量売り出し……」
といったメッセージを送ります。
羅さんは連絡を受けると、値段交渉成立後、「お客様」を対象グループへと招待し、その先はお客様が自由に発信したり潜在顧客にむけたPRできるようにする、という仕組みです。
羅さんは販売しているWechatグループを「一般グループ」と「セレクトグループ」の二種類に分けて管理しています。
グループの種類により値段が異なり、その費用は一般グループの場合で150グループで50元、セレクトグループの場合は70グループで100元、となっています。
例えばある幼児教育教室の営業担当が、一般グループ150グループを50元で買うと、最低でも100人以上参加者のいる幼児教育関連のWechatグループを150グループ加入することができ、そのグループ内で自分の売りたいサービスの案内を流したりすることができます。
羅さんは個人でこのビジネスを展開する他、グループ運営やアドオン事業なども行っています。
オンラインプラットフォーム「大聖広告」は、普通のグループならば40グループ99元、100グループ199元、200グループ299元と羅さんより4倍近く高い値段で取引しています。
各グループは「中古車グループ」、「留学生グループ」、「釣りグループ」など細かく分類されており、値段はグループの分類と質により異なります。
ECサイトオーナーが頼る空包という裏ビジネス
Wechatグループのビジネスは、他にも多数存在します。
楊子さんは、二つの顔を持っています。勤め人として会社で働く傍ら、個人で外国商品の代理購入、Wechatコマース、各ECプラットフォームへの空オーダー等のビジネスを展開しています。
ECプラットフォームへの空オーダーというのは、タオバオなどのECサイトを運営しているオーナーが顧客となり、空のオーダーを発注するのが楊子さんたちWechatグループの役割です。ECサイトの利用者において商品の販売数は重用な指針となり、売れている商品は上位に表示されやすくなります。
楊子さんのグループでは依頼があった商品を購入、発注を行いますが、実際に商品は送られません。ただ「空包」という方法をとると、送られたという形を1商品あたり2元程度支払うことで可能となります。
ECサイトで多くの販売実績が付いている商品は安心と思ってしまう消費者が多いようですが、実際の現場ではこのようなことも行われているので一概に販売量が多いものが良い商品とは言えないのが今の現状のようです。
企業やサービスのファンを増やすにもWechatグループは効果的
李さんは、「雲集」(中国のB2Bプラットフォーム)というサービス会社の顧客マネージャーです。
彼は約400人のグループを運営しています。毎日、その日の担当者がグループ内に商品情報・雲集に関するニュース・ミニブログ・ビデオをシェアし、グループとモーメンツによる商品販売・新規会員開拓を行うというビジネスモデルです。
例えば398元の商品が実際に売れた際には150元の紹介料と10%程度の成約料が紹介者に支払われる仕組みです。
更に実際にサービスの成約を21人、会員登録を82人達成した人には顧客マネージャーの称号が与えられ、より良い待遇になっていきます。
顧客マネージャーになると管轄するチームメンバーのサポートも行う立場になり、メンバーが売上を上げた際にはその一部を利益として得ることができます。
顧客マネージャークラスになると月に1万元以上の収入が見込めるそうです。
まとめ
いかがでしたか。今回はWechatグループとそれを取り巻くビジネスを紹介いたしました。
残念なことにこの中には、日本と同じく悪意あるマーケティングや詐欺、不正なアドオンなど問題のあるビジネスや、グレーゾーンぎりぎりのビジネスも存在しています。
10億人という膨大なユーザー数を誇るWechatとしては、当然無視できない問題ですので、これについてWechatのセキュリティチームは、情報の安全管理に全力を挙げています。
それでも規制のスキを突いて、Wechatグループを巡ったもあらゆるビジネスが展開されていく事は間違いありません。
Wechatが、そして玉石混合の新しいビジネスパーソン達が、どのような進化を遂げるのか、注目されます。
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