日本に鳴り響く華為の着信音
20世紀半ばのアメリカで「安かろう悪かろう」の代名詞だった日本の自動車は、数十年の年月をかけた「カイゼン」により、世界一の座を手にすることができました。
時は流れ21世紀、かつて安かろう悪かろうのイメージがついて回った中国の電化製品は、今や世界を席巻する存在となっています。
今回は、そんな世界を席巻した中国企業、日本でも着信音を聞かない日が無いほど隆盛を極めたあのスマホを製造した世界的大企業、華為(ファーウェイ)をご紹介いたします。
華為とは?
華為は前回紹介したテンセントと同じく、1987年に通信機器開発メーカーとして深セン市に生まれました。
よく、当時の深セン市は「昔は田んぼが延々と広がる、いわゆる典型的な『平地系田舎』だった」と言われますが、当時から香港に近いという地の利はあったようで、後に世界で革命を起こす企業のいわば「揺りかご」であったようです。
現在、IoTやAI技術で世界の最先端を行く深セン市には、この時期から既に「東洋のシリコンバレー」としての素地があったのです。
華為は当初、中国移動や中国聯通など中国大陸の顧客を相手に商売を展開していましたが、香港が中国に返還された1997年、香港で事業を展開する英国資本の外資企業、和記黄埔有限公司(ハチソン・ワンポア)との提携を皮切りに、世界へ羽ばたいていくことになります。
「タイムリミットは半年間」
華為の人事には、他社と異なる変わった習慣があります。例えば、華為のCEOは取締役会で選ばれた3名による「輪番制」を採っています。
それぞれの任期は半年で、任期を過ぎれば有無を言わさず交代となります。つまり、晴れてCEOになったとしても、勝負に掛けられる時間はわずか半年、この半年間に何らかの結果を出さなければならないのです。
日本的な感覚では、じっくり腰を据えて事業に取り組めない悪手のように感じます。しかしここで考えてみてください。日本人の中で、去年の流行語や流行歌を思い出せる人が何人いるでしょうか?誰もが歌える歌謡曲があった時代は、既に過去のものになってしまいました。現代社会の変化は、比較的安定した日本ですらこれほど早いのです。
経済成長を続ける世界の変化がどれほど早いかは、言うまでもないでしょう。華為のCEO輪番制は、この激しい変化に対応するための策略なのです。
「20代が勝負」
終身雇用や年功序列といった確固たる企業文化を有する日本と違い、中国では完全な成果主義から従業員第一主義まで、それぞれの業種やビジネス形態によってそれぞれの成長戦略に合った企業文化を確立しています。その中でも、華為の企業文化はかなり異色な存在です。
日本では今でも、新卒の正社員として入社すれば、よほどのことが無い限り解雇されません。その理由は、例え時代に即していなくても、それが企業文化として、果ては日本社会を形作る文化として定着しているからです。
では華為はどうか?俗に「狼型」と呼ばれる徹底的な合理主義を貫く華為も、新卒は大切にします。むしろ日本企業に比べて、多くのチャンスが貰えるでしょう。但しそれは新卒である間だけ、従業員が「働かないおじさん」と化したとき、華為は突然、牙を剥き始めるのです。
「35歳定年制」
日本の大手企業には「早期退職制度」という、年功序列で高コスト化した従業員をソフトにリストラする制度がありますが、華為にもそれは存在します。ただ日本と違うのは、希望退職ではないこと、そして対象者が「35歳以下(!)」であることです。先に「20代が勝負」と言ったのは、こういうことがあるからなのです。
華為の従業員は、35歳で岐路に立たされます。35歳で役職に就いていない、目立った実績を上げていない、そしてやる気がない従業員は、多くの場合問答無用で退職金とともに会社を去ることになります。これによって浮いた人事コストはどうなるのか?それはより優秀な人材の招聘に使われるのです。退職金の支払いでコストが何億元かかろうとも、血の入れ替えによって元が取れる、それが華為の考え方です。早期退職制度と違って希望退職ではないので、「残ってほしい人材が辞めて辞めてほしい人材が残る」という本末転倒な事象も起こりません。このようにして、常に「戦う集団」が形成されているのです。
「変化への適応」
このような華為の戦略に対しては、中国国内でも賛否両論に分かれています。確かに人生も半ばに差し掛かった人材を路頭に迷わせるのは、非情と取られてもおかしくはないですし、従業員の人生ごと責任を負う旧来の日本型経営で実績を上げている大企業があるのも事実です。
しかし、企業文化は企業の数だけ存在します。強い基盤にじっくり腰を据えて堅実に事業を育てるもよし、変化に対応しながらビッグウェーブに乗ってどこまでも高みを目指すもよし。日本人にとって、華為の企業文化はきっと刺激的に映ることでしょう。
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