互換ソフトのキングから、スマホ業界のキングへ

20世紀からのネットユーザーならば、キングソフト、というメーカーに聞き覚えのある方は多いかもしれません。
そう、2000年代半ば頃、PC売り場に並んでいた格安PCにインストールされていた謎のOffice互換ソフトを製作していた会社です。
動作は重いながらも実用に堪える性能を誇り、何より本家Officeの1/3というその価格で、デフレにあえぐ日本経済を大いに支えたキングソフト。
昨年末のこと、そんなキングソフトが、新たな会社を立ち上げ、スマートフォンという形で装いも新たに日本市場への参入を果たしました。その名を「小米(Xiaomi,シャオミー)」と言います。
立ち上がるおっさん達

シャオミーは元キングソフト会長の雷軍氏により、2010年に北京市で創業されました。
時はモバイル転換期、モトローラ、ノキア、サムスンの三強体制が崩れ国内産スマホが台頭していた時期です。
後に中国のシリコンバレーとなる深セン市やその近隣都市から華為やVivoなどのスマホメーカーが攻勢を強める中、シャオミーは北方の都市である北京市を代表する企業として、スマホ業界へ参入しました。
通常こうした新興産業の創業者は20代の若者が多いのですが、シャオミーの創業者は40代がほとんどでした。
青春に期限などなく、探究心に歳は関係ないと言わんばかりの参入劇だったのです。
中国のアップルと意図的に呼ばせた戦略

中国のメーカーと言えば、数撃ちゃ当たるの安かろう悪かろう、粗雑乱造の右代表のように思われがちですが、シャオミーの戦略は「一点集中主義」でした。
2011年に同社初のアンドロイドスマホMI-One(小米手機)を販売して以降、他社のように様々なスマホを開発するのではなく、この小米手機一本で勝負をかける手に出たのです(長浜ラーメンみたいですね)。
機種をハイエンド機種一種類に絞り、それを大量生産するだけでなく、マーケティングをオンライン一本とする徹底ぶりでコストを抑え、オトクな価格でハイスペックマシンを提供する。
同じ価格帯では破格の性能を誇り、独特のデザインとユーザビリティにこだわった小米手機は、熱心な「シャオミーファン」を生み出しました。
会社にしろ、個人にしろ、その成功にはどんなときでも味方になってくれるコアなファンやファミリーの存在が欠かせません。
「絶対に負けない場所」を得たシャオミーの評判は口コミによって広がり、中国のスマホユーザーの支持を一気に広げることに成功したのです。
草の根マーケティングとの戦い

中国市場は日本市場と違い、倒しても倒しても次々と挑戦者が現れる過酷な戦場です。
特に今をときめくスマホ市場ならばなおのこと、明日のゲイツやジョブスを夢見た若者が、中国大陸のあちこちから戦いを仕掛けてきます。
シャオミーのライバル企業たちは、オンライン・マーケティングで支持を広げたシャオミーの逆手を取り、農村部を中心とした「リアル看板」によて徹底したオフライン・マーケティングを仕掛けました。
直接ユーザーの目に留まることに専念したこの戦略は、ライバル企業の認知度をじわじわと上げ、確実にシャオミーのシェアを奪っていきました。
2013年には国内シェアトップを誇っていましたが、2014年には華為(ファーウェイ)に抜かれ2位に、2016年には6位にまで転落してしまったのです。
復権を賭けて

これを受けて、シャオミーは大胆な一手を打ちました。
なんと、スマホメーカーから白物家電業界へと転身したのです。
スマホがテレビ録画の予約から空調スイッチのオン/オフまで何でもこなす時代、白物家電への進出という決断は合理的であるといえるでしょう。
従来の技術を活かしたタブレットやスマートテレビに始まり、現在同社はスマホと連携するスマート空気洗浄機、果ては「小米」の名の示すとおりスマート炊飯器を開発製造、販売しています。
この転身が中国の白物家電業界にどのような変化をもたらすのか、注目が広がっています。
シャオミーの日本進出は、このような流れの中で実現しました。
中国で絶大な信頼と実績を誇ったシャオミーとはいえ、日本市場でどの程度の認知度とファンを獲得できるかは未知数ですが、「中国のアップル」が日本市場でどのようなイノベーションを起こすのかが注目されます。
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