アリババグループに属する農村ECプラットフォーム―「村淘」

中国トレンド

ニーハオ!イマチュウ代表のバヤシです。

イマチュウは、日本と中国に拠点を持って活動しながら、最新の中国トレンドをお届けするメディアです。

中国アリババグループの運営するECプラットフォーム「淘宝(タオバオ)」は、日本の方でも耳にしたことがあるのではないでしょうか?

その淘宝(タオバオ)が中国農村を拠点に展開してる「村淘」というECサービスもあります。中国では日本以上にEC市場が発達しており、EC無しで生活するのは困難というほど社会のインフラになっています。

今回は「村淘」について皆さんに紹介したいと思います。

村淘とは

村淘は「農村淘宝」の略で、2014年10月に米国上場を完了したアリババグループが打ち出した農村戦略の一環です。

今後3~5年以内に100億元を投資し、1,000県と10万行政村をカバーする「県・村」二つのレベルで農村 EC サービス体系を構築するという目標を掲げています。

具体的な枠組みは「双核+N」とされており、「双核」とは「農村淘宝」と「淘宝村」を中核とすることで、「N」はアリババプラットホーム上の多様な農村関連業務を指します。

「農村淘宝」というO2Oモデルを通じて、県にはEC運営センター、村にはサービスステーションを設立し運営をしています。

「消費財下郷」の情報と物流ルート開拓を行い、「農産物上行」(オンライン販売)のチャネルを利用することにより、農民向けのインターネットサービスシステムを構築しています。

2015年12月9日時点で、「農村淘宝」は全国 22 省、202 県と 9,278 の行政村でサービスステーションを設置しています。

「淘宝村」とは、ある村をモデルケースとして多くの通信業者を集め、淘宝を取引プラットホームとして、淘宝の EC で農村で作られた製品や、作物、工業品を売るためのサポートが構築されています。

「淘宝村」の認定基準として、取引場所、取引規模、ネット業者規模の三つが含まれます。

さらに、農村で取引、物流、決済、金融、クラウド、データなど EC 関連インフラを整備する計画です。各種事業者はこれらのインフラを利用して、農村と農民向けにより多様化・革新的な情報化サービスを提供することを目指しています。

村淘が生まれた背景

村淘が生まれた背景として、以下の三つが考えられます。

①農村消費市場の潜在力が大きい

中国の農村人口は非常に多いです。近年農村経済の発展により、農村住民所得が上昇しています。更に、農民のインターネット利用意識の喚起は農村の電子商取引発展につながると考えられています。これまで、ネット小売の発展都市部のネット消費に牽引されてきましたが、農村住民の所得増加やインターネットの農村における普及に伴い、農村部がネット消費未開拓市場として考えられています。

②政府の重点施策が農村経済へ偏る

制度・体制の未整備により、都市と農村における所得、公共医療、教育、養老において大きな差が起こっているのは事実です。従って、農村経済の発展は社会および政府の重点施策となっています。中国政府が推し進めている「精準扶貧」、「インターネット+」などの戦略下で、アリババグループが村淘サービスを打ち出しました。

③農村インフラ建設の加速

農村の交通、ネットなどインフラ建設が加速しています。農村経済の発展が政府の重点施策となった今、農村経済を推進する政策が相次いで打ち出され、交通やインターネットなど社会インフラの整備に伴い、農村でも電子商取引が可能となっています。

村淘の特徴

村淘の一番大きい特徴は、都市から農村へ、農村から都市へという双方向流通ネットワークだといえます。農産物の「進城」(都市部で販売されること)と都市部商品の「下郷」(農村での販売)という双方向流通の実現を目標としています。

農村におけるネット通販の発展は農民の生活水準向上や農業生産コストの引き下げに有利であるほか、内需拡大と消費刺激、農村での創業と就業の拡大を促進する効果があると見込まれます。

もう一つの特徴として、政府政策の支持が挙げられます。中国政府が推し進めている農村経済発展政策が村淘の展開を力強く推進しています。政府政策の補助とアリババの技術の組み合わせにより村淘は独自の強みを持っています。

実際の運用状況

前述したように、村淘は「双核+N」を枠組みにして展開しています。農村のインターネット化を通じて、農民の所得増加、農村の経済発展、農業の高度化を実現したうえで、「新型都市化」を推進することを目指します。双方向物流ネットワーク、生鮮EC、農村金融という三つの分野を重点項目としています。

インターネットに詳しい現地の人を対象に、農村ECのパートナーを非専門的な商店から専門化された「農村淘宝パートナー」に任命しています。

物流については、「菜鳥網絡」が県に公共物流拠点を設立、小包が公共物流拠点に届いた後、現地の物流システムによって農村へ配送するようになっています

農村EC人材育成にも力を入れています。「淘宝大学」を利用して「淘宝村EC人材育成計画」を実施、「知識下郷」、オンライン学習プラットホーム、「淘宝講師」という三つの面から農村EC人材を育成しています。

農村金融支援も充実しています。アリババグループの金融機関である「螞蟻小貸」と「農村淘宝」プロジェクトをリンクさせ、現地に人脈を持つ「村淘パートナー」を利用して、農民向け信用貸出を実施しています。

アリババ研究院の統計によると、2012~2015年、アリババプラットホームに基づく農産物の販売業者数は26.1万社から90万社に、農産物の売上高は200億元から695.6億元に大幅に増加しました。

今後の展開

村淘は農村ECとして、まだ発展の初期段階にありますが、今後はさらなる発展を果たすものと予想されています。村淘の今後の動きとしては、以下のようなことが考えられます。

農村消費市場の多層的な消費構造、及び都市部との消費観念の違いに基づき、村淘は核心的な商品選別力の養成、ラインナップの多様化に取り組む予定です。

農村において、商品が家に届かないことがあり、物流拠点と配送方式を合理的に整備することも村淘展開の重要なポイントになります。

また、アリババグループの決済・金融プラットフォームを活用し、農村決済体系の発展を促進します。

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