「物流企業がやらないことをやる」―菜鳥網絡

中国トレンド

中国のEC業界は、近年世界中から注目されるほど著しい発展を遂げています。

EC業界の発展には、物流が欠かせません。中国では今、EC業界の成長に伴う宅配便取り扱い量の増加で、物流がパンクするのではないかと懸念されています。

特に毎年11月11日の「独身の日」に大々的に催されるネットセールなどの時に、この問題が特に深刻になります。(※注:中国では11月11日を「独身の日」として、この日前後に大掛かりなショッピングイベントを開催する習慣がある。)

爆発的な仕事量の増大によって、末端の配達所は荷物でいっぱいになり、配達物を管理するスペースに事欠くなど、物流崩壊のエピソードがよく耳にされていました。

しかし、2016年以後は、そういうエピソードは無くなり、また商品到着にかかる時間も更に短縮されています。

実はこの進化の裏には、菜鳥網絡という企業の存在がありました。

今回は中国のEC業界を支える菜鳥網絡をみなさんに紹介したいと思います。

菜鳥網絡 とは

菜鳥網絡(Cainiao Network)は、アリババ傘下でアリババの物流を一手に担うハイテクロジスティック企業です。

2013年に、中国EC大手のアリババグループ、リテール大手の銀泰グループ、キャピタル大手の復星集団、及び中国物流大手企業の順豊、中通、円通、申通、韵逹の共同出資により、深センで設立されました。幾度かの増資を経て、現在はアリババグループの子会社となっています。

菜鳥網絡 は、アリババグループを支える三つの柱(EC基盤、支払基盤、物流基盤)の一つとして、近年特に重視されています。

菜鳥網絡はECの発展による膨大な物流負荷に対応するために設立され、ロジスティックスのデジタル化と、四通八達の物流ネットワーク構築を目指しています。

菜鳥の使命は「中国全土24時間、全世界72時間」の配送を実現することです。先進的なインターネット技術を利用して、オープンで透明性のある、シェアデータの応用プラットフォームの構築に力を入れています。

菜鳥網絡の主なサービス

菜鳥網絡は、タオバオやTMallなどのアリババのECプラットフォームと同様、物流・配達作業そのものは担当せず、物流・配達業者に物流基盤を提供するプラットフォーム型ビジネスモデルを取っています。

世界的な物流プラットフォームを通じて物流会社の効率を向上させ、プラットフォーム利用料を受け取る、というビジネスモデルです。

菜鳥網絡が提供している主なサービスは以下となります。

1、倉庫、配送

菜鳥は全国各地に倉庫を有しているので、提携企業は菜鳥の最寄りの倉庫に商品を保管することができます。

2、海外ネットワーク

菜鳥は海外の物流企業と連携して、海外の消費者向けの物流サービスを提供しています。将来的には全世界に対して物流の追跡サービスを提供していきたいとしています。

3、物流追跡サービス

EC企業向けに物流データの監視、異常案件の処理、適時の物流状況追跡サービスを提供します。企業の物流情報管理、異常案件の管理に力を貸すことで、物流コストの軽減と物流サービスのレベル向上を達成することを目的としています。

4、菜鳥驿站

菜鳥は、ネット通販利用者の商品を預かるサービスを提供しています。商品の受け取りに不便があるときや、プライバシー保護のために商品を預かって欲しい消費者向けのサービスとなります。

菜鳥網絡のユニークな取り組み

中国には順豊をはじめ、JDドットコム、中通、申通など物流サービスを展開する有力企業が数多く存在しています。そんななか、菜鳥網絡はユニークな取り組みをしています。

「物流企業がやらないことをやる」とは、菜鳥の国際広報責任者キャリー・ヤン氏が明かした菜鳥のポリシーです。菜鳥は物流企業でありながら、トラックや船での輸送自体は手がけず、その代わりにソフトウェアやデータ、倉庫や集配所などの関連分野で既存の物流企業をサポートします。

菜鳥は手書きで行っていた宛名書きをデジタル化し、物流会社ごとに異なるデータを標準化することで、コストの削減と時間の節約を実現してきました。

国際物流においても、書類の電子化や標準化などの取り組みを進めています。アリババは「eWTP(世界電子貿易プラットフォーム)計画」の一環として、マレーシアで通関書類を電子化しています。

菜鳥はスマート倉庫・配達にも取り組んでいます。浙江省・湖北省・武漢市・広東省・天津市・無錫市などに無人倉庫を建設し、ロボットが商品のピッキング、搬送、梱包などを行う物流作業の自動化を実現しています。スマート梱包アルゴリズムに基づき、商品の外観やサインなどの情報をもとに、最適な箱を選択し、梱包する仕組みです。

荷物が現在どこにあるかが一目瞭然となったほか、どのルートで運べばいいのか、どの荷物をセットで搬送すれば効率的なのかをコンピューターで簡単に判断できるようになり、物流を最適化しています。

菜鳥網絡―イノベーションの最先端

菜烏は、「インターネットテクノロジー会社」と位置付けられており、膨大なデータを武器に、ビッグデータ、人工知能など最新テクノロジーを駆使して物流革命を起こそうとしています。その核心が、中国スマート物流骨幹ネットワーク(中国知能物流骨幹網、China Smart Logistic Network、略称CSN)といった物流プラットフォームになります。

菜鳥は人工知能の開発に取り組み、物流・配達業界の「ロジスティクス・ブレイン」というシステムを開発しました。このシステムを利用することで、荷物、車両、倉庫、配送員などの物流・配送状況のオンライン化と物流作業の最適化を図り、物流コストの低減と配達の効率向上が実現されました。

更に、菜鳥は無人倉庫、天眼システム、AR物流システム、スマート梱包システム、AGVロボット(無人搬送車)や配送ロボットなどの多くの製品や技術の開発に力を注いでおり、イノベーションの最先端に立っています。

まとめ

いかがでしたか。今回は、物流業界の未来を担う新鋭企業「菜鳥網絡」を簡単に紹介いたしました。

物量勝負の伝統的物流から、テクノロジー主導の新しい物流への転換を加速させている菜鳥網絡からは、物流業界の未来を感じさせられます。

弊社では、アジア最大級の菜鳥無人倉庫である無錫菜鳥の見学や、菜鳥の無人倉庫を支える無人ロボットメーカー クイックトロンのツアーも承っておりますので、ご興味のある方は是非お気軽にお問い合わせください。

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